2019年9月9日月曜日

悪文、本2冊

 9月4日『朝日新聞』「多事争論」(国分編集委員)の文章の冒頭は「7年前に政権の座を失った立憲民主党や国民民主党など旧民進勢力が、再結集をにらんで動き始めた」。これは悪文の典型的パターンの一種。「政権を失った立憲民主党」と「国民民主党など旧民進勢力」とも読め、立憲民主党は政権を取ったことがあると早とちりしそうでもある-現実ではあり得ないであろうが-。誤解の与えない正しい文ならば、「7年前に政権の座を失った、立憲民主党や国民民主党など旧民進勢力が、再結集をにらんで動き始めた」とすべきであろう。要は「、」を一箇所に追加するだけ。あるいは「立憲民主党や国民民主党など、7年前に政権の座を失った旧民進勢力が、再結集をにらんで動き始めた」のほうがより分かりやすい。かつての朝日新聞記者だった本多勝一の『日本語の作文技術』を読んでいないのか、なんてふと思ってしまった。この類の文章はよく目にする。

 <下川耿史 『教科書では教えてくれない 18禁の日本史』(宝島社、2017年)>:男と女、男と男、要は教科書には出てこない、親しい友人としか話題には乗せられない、歴史上の性(性交)のエピソード集。女と女はまず書かれないから、その関係はなかったのかあるいは記録がないのか、余程の秘め事だったのか。
 人間どうしの下半身の交わりは基本的に何の変化もなく、どのように性的欲望を満たすのか、そのための方法はいかようだったのかという史実・伝説が全ページを蓋う。かくして同じ事は過去から未来へと永遠に語り伝えられる。上杉謙信はどうだったのか、道鏡の何のサイズはすごかったとか、森蘭丸と織田信長とか等々の話である。

 <東野圭吾 『危険なビーナス』(講談社文庫、2019年、初刊2016年)>:40歳前後の独身男性獣医師の伯朗、最後になって姿を現す異父弟の明人、その妻でカーリーヘアー美人の楓、動物病院の美人助手の蔭山元美、伯郎の母の再婚相手先である矢神一族。物語の核を成すのは(後天性)サヴァン症候群、フラクタル図形、ウラムの螺旋など。そして素数に関係して謎のままに消失する絵である”寛恕の網”。
 素材の組み合わせや構成の巧さはやはり素晴らしいとは思うのだが、フラクタル図形とウラムの螺旋への展開はこじつけている感じがするし、明人の行方不明の謎ときをする楓と伯朗の探偵ぶりにはいじりすぎという感が強い。登場人物では伯朗の助手が魅力的である。

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