2017年9月15日金曜日

一米沢藩士の「明治」

 <友田昌宏 『戊辰雪冤』(講談社現代新書、2009年)>:サブタイトルは「米沢藩士・宮嶋誠一郎の「明治」」で、「幕末から明治にかけて活躍した米澤藩出身の官僚政治家」である宮嶋誠一郎を描く。
 慶応4年/明治元年(1968)に新政府より討伐を命じられた仙台藩とともに米澤藩は会津藩の嘆願書を出し、結局のところ奥羽列藩同盟に加わり新政府に立ち向かった。結果は米澤藩は(会津藩とは異なり)減封されて廃藩置県を迎えるのだが、宮嶋誠一郎が中心となって明治政府の方針を積極的に支持し、「朝敵」の汚名の「雪冤」に努力した。本書はその宮嶋の「明治」を追う。「国家への忠節を第一とするため、中央集権体制確立に向け藩政改革をリード」するのであるが、「政府の要人と結託し、隠然と事を運ぼうとする誠一郎のやりかたは、ときに卑屈に映り、不審のまなざしを向けられることもしばしばだった」のであり、「政府から功績に見あった評価も得られず、米沢での評判もすこぶる芳しからざるものであった」。しかし、宮嶋は米沢出身者が出世をし、世に名を出せば喜んだという。
 郷土が朝敵となった悔しさ、深い郷土愛、そして「雪冤」の努力に関心は向かない。宮嶋の動きにはある種の滑稽ささえ感じてしまう。それは、郷土愛は否定しないが、そこに感じる偏狭さを見てしまうからである。
 本書の頁を開くと宮嶋の上半身の写真が掲載されている。宮嶋の活動も含めて、その写真の表情が鈴木宗男と妙に重なって見える。それは的を射ているのか、あるいは思い過ごしなのか曲解なのか。

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