2018年6月11日月曜日

『想像ラジオ』

 <いとうせいこう 『想像ラジオ』(河出書房新社、2013年)>:「東日本大震災」をテーマにした小説。購入してから約4年の間、表紙を開いては途中でページを捲るのをやめるということが続いた。出だしが緩慢としていて一体何を描こうとしているのか判らずに放ってしまうということが大きな要因。
 突然に亡くなってしまった人たちの声を「想像」で流すという小説に違和感を覚え、内容の軽さに生者の傲慢さも感じた。傲慢さとは、多くの人びとが亡くなり、残った多くの家族の人たちにそれぞれの悲しみがあるが、それを束にして「想像」してしまうこと。
 作中、海外のポップスが流されるが、それがこの小説を軽くしている要因の一つであろう。東北の地を舞台にするなら演歌でも流行歌でも混ぜてみたらどうだったろう。小説の中のポップスを(既に持っているものも含めて)すべて聴いてみたが、新たにYouTubeからDLする曲は一つもなかった。

 東京オリンピックが復興五輪とされて久しいが、いつのまにかその「復興」の言葉は薄れてしまっている。「国会事故調報告書」は未来にどう活かされているのだろうか、政治はどう死者に向き合っているのだろうか、甚だ疑わしい。

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