2018年6月15日金曜日

官能ミステリーと思ったが

 <花房観音 『京都三無常殺人事件』(光文社文庫、2018年)>:帯には「京都の魅力が十分に詰った連作ミステリー」とあり、表紙には二年坂(?)に立って振り向く和服の女性とそれを見上げる男の後ろ姿。著者が花房観音で書名が殺人事件、そして3つの殺人の連作集とあらば、古都の清寂の中で殺人事件の謎解きが展開され、ストーリーのなかで女が帯を解き、艶かしい官能場面が描かれる。一言で言えば、妄想満開の官能ミステリーでしばし時間を潰そうと手に取った。
 著者が京都市在住で現役バスガイドでもあることより、京都名跡の観光案内と「京都殺人案内」的な軽いミステリーと思っていたが、3作独立の殺人事件が最後にはすべて繋がるという鮮やかさもある。バイプレイヤーの35、6歳未亡人である月寺松葉の台詞は小気味よく響き、一方では謎解きには無理を感じるが、全体的には楽しめた。けれども、期待していた(?)官能描写は皆無で、スケベ心の我が身が背後から膝かっくんされたような思いもある。
 会話での謎解きをうまく映像構成すれば、この小説はミステリー劇場風にテレビドラマ化するにはうってつけで、ドラマ化されるに違いないだろう。

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